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早めの準備が未来を変える 開業医の相続・事業承継の最善策

早めの準備が未来を変える 開業医の相続・事業承継の最善策

相続や事業承継の準備は、開業医の未来を守る大切な一歩です。「いつかやろう」ではなく、健康なうちに家族と共に話し合い、具体的な方向性を決めることで、突然の事態にも備えることができます。本ブログでは、早期対策の重要性と具体的な進め方を事例を交えてわかりやすく解説します。

開業医の相続と事業承継 なぜ早期対策が必要なのか

開業医の先生方にとって、相続と事業承継の準備は避けて通れない課題です。日々の診療に追われる中で、「時間ができたときに考えよう」と先延ばしにしてしまうことは、決して珍しくありません。しかし、相続や事業承継の対策は準備に時間がかかるため、早めの着手が非常に重要です。

特に、事業承継の方針を早い段階で明確にすることが、相続対策を進める第一歩となります。クリニックをお子様に引き継ぐ場合と、第三者に譲渡する場合では、必要な対策が大きく異なります。例えば、親族内承継の場合は、後継者としてのお子様の意思を確認することが重要になります。一方、第三者への承継では、譲渡先の選定や事業価値の評価、さらには譲渡のタイミングを慎重に考える必要があります。

もし事業承継の方針が決まらないまま相続対策を進めると、家族間の話し合いが難航するリスクが高まります。実際、先に相続税対策だけを進めてしまい、後から事業承継の方針が変わったことで対策が無駄になることや、かえってトラブルを生んだケースも見られます。事業承継と相続対策は車の両輪のように一体的に進めるべきであり、一方に偏った対策を取ると、家族や関係者に負担を強いる結果になりかねません。

さらに注意が必要なのは、相続税の軽減だけを目的にした対策を進めることです。クリニックや家族の状況を総合的に考慮せずに部分的な対策を取ると、どこかで歪みや不利益が生じる可能性があります。専門家と一緒に全体像を把握し、個別の事情に合わせた対策を立てることが、ご家族とクリニックを守るための第一歩です。

健康なうちに相続・事業承継対策を進めるべき理由

「突然の病気や事故は自分には起こらない」と思いたい気持ちはよくわかります。しかし、現実には予測できない出来事は誰にでも訪れる可能性があります。このようなことは出来れば考えたくありませんが、特に理事長先生がご高齢の場合は、健康上の問題が発生するリスクに備えることが重要です。

例えば、先生が認知症を発症して意思決定を行えない状況になった場合、クリニックの運営はもちろん、ご家族の生活にも深刻な影響を及ぼします。意思決定ができない状況では、事業承継や相続対策の方針が決められないことで、家族間で争いが起きる原因にもなり得ます。後継者を定めていない場合は、クリニックが閉院に追い込まれることもあるのです。これは決して他人事ではありません。

健康で元気なうちに、家族全員で話し合い、具体的な方向性を固めることがリスクを回避する最善の方法です。専門家の力を借りて円滑に進めることで、家族間の合意形成も進めやすくなります。「いつかやる」ではなく、「今すぐ取り組む」という意識が重要です。

医療法人の理事長の相続から学ぶ 家族とクリニックを守る方法

実際に私が関わったあるケースをご紹介します。この事例は、私がこの仕事に注力するきっかけとなったものです。

ある診療所の理事長先生が突然の病気で急逝されました。先生には奥様と未成年のお子様、そして前妻との間に成人したお子様が2人いらっしゃいました。このような複雑な家族構成が、相続手続きの難易度をさらに高める結果となりました。

先生のご逝去後に、相続人全員は初めて顔を合わせました。遺言書がなかったため、初対面で遺産分割協議を行わなければなりませんでした。未成年のお子様の特別代理人に弁護士が選任され、そのまま代理人として分割協議の場に参加しました。遺産分割協議の結果、医療法人の出資持分の全てとご自宅を奥様が取得しましたが、その他の財産は法定相続分での分割となりました。

このケースでは、医療法人の後継者となる医師は親族にいませんでした。しかし、奥様は先生が開業して長期にわたって診療を続けてきたクリニックの存続を望んでいました。早い段階でクリニックの購入を希望する医療法人が現れたことで、クリニックはその医療法人に無事に事業譲渡され存続することが決まりました。同時にクリニックの土地建物も医療法人のMS法人(メディカルサービス法人)に売却される形で整理が進められました。

事業譲渡により、クリニックもなくなったため、県の解散認可を経て医療法人は解散・清算となりました。最終的には出資持分を相続した奥様が医療法人の残余財産の分配を受けて、一連の手続きが完了しました。奥様は長期間にわたる様々な手続きに関わる中で、精神的にも大きなご負担を抱えられました。先生の相続に始まり、事業譲渡や医療法人の清算まで複雑な手続きが次々と続いたのです。そのご苦労は、想像に難くありません。

この事例では、幸運にも相続人間の協議は無事にまとまりました。しかし、それはあくまで結果論であり、事前に何かしら対策ができていれば、ご家族の負担をもっと軽減できたはずです。例えば遺言書があれば、経過はかなり違うものになったのではと思います。この経験を通じて私は、「早めの対策こそが家族とクリニックを守る」と確信するようになったのです。

開業医の事業承継は相続対策と同時に進める

事業承継対策と相続対策は、どちらも単独では成り立ちません。例えば、お子様が医師の場合、本人の意思を確認しながら、後継者としての準備を進める必要があります。一方で、親族内承継が難しい場合には、第三者への譲渡を検討することも視野に入れるべきです。クリニックの価値を最大化しながら、地域医療を守るための計画を立てることが求められます。

どちらのケースでも、事業承継の方針を先に固めることで、相続税や財産承継に関する具体的な対策を取りやすくなります。また、家族全員が同じ方向を向き、安心して次のステージへ進むためには、家族間での合意形成が欠かせません。こうしたプロセスを丁寧に重ねていくことで、円滑な事業承継と円満な相続が実現するのです。

最後に強調したいのは、「対策は早いほど良い」ということです。そして、「家族全員の合意形成を図る」ことが大切です。ご家族での話し合いが難しい場合は、専門家が間に入り家族間のコミュニケーションをサポートすることで、最適な解決策が見えてきます。一歩踏み出すことで、家族とクリニックの未来を守るための最善の計画が前進するのです。

私はこれまで、士業などの専門家と協力して開業医の先生の相続と事業承継をサポートしてきました。その経験を活かし、先生方の状況に合わせた最適な方法を一緒に見つけていければと思います。少しでもお悩みやご不安があるようなら、ぜひお気軽にご相談ください。

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