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医療法人の出資持分の評価方法が変わる? ― 新しい評価ルール案のご紹介 ―

医療法人の出資持分の評価方法が変わる? ― 新しい評価ルール案のご紹介 ―

持分あり医療法人の相続や事業承継を考えるうえで、出資持分の評価は重要なポイントの一つです。

2026年8月、日本経済新聞で、国税庁が取引相場のない株式の評価方法について、新しいルール案を示したことが報じられました。今回示された案では、これまでとは評価の考え方が大きく変わり、法人の状況によって、現在より評価額が高くなる場合もあれば、低くなる場合もあります。

今回は、現在の評価方法と新しい評価ルール案の違いを整理し、医療法人の出資持分の評価にどのような影響が考えられるのかを見ていきます。

取引相場のない株式に新しい評価ルール案

2026年8月21日付の日本経済新聞朝刊によると、国税庁は8月20日に開かれた有識者会議で、取引相場のない株式の相続税評価について新しいルール案を提示しました。

今回示されたのは「残余利益方式」と呼ばれる方法で、法人の簿価純資産と収益力を考慮して評価する方式です。新しいルール案では、法人の直前期末の簿価純資産に、今後5年間で見込まれる収益力を考慮し、一定の係数を掛けて評価額を求めます。5年間の利益については、過去5年間の平均額などから算定する案となっています。

まだ正式に決定されたものではありませんが、実現すれば、取引相場のない株式の評価方法が大きく変わることになります。

現在の出資持分の評価方法との違い

現在、持分あり医療法人の出資持分は、法人の規模などに応じて、類似業種比準価額方式と純資産価額方式を使用して評価します。

類似業種比準価額方式では、類似する上場企業の株価を基礎として評価します。一般の会社では配当・利益・純資産の3項目を比較しますが、医療法人は配当が禁止されているため、利益と純資産の2項目を比較して評価します。

一方、純資産価額方式では、法人が所有する資産や負債を相続税評価額に置き換え、その差額である純資産を基礎として評価します。これに対して、新しいルール案では、こうした現在の評価方法から、簿価純資産と法人の収益力を重視する方法へ変更することが検討されています。

2026年8月20日付の日本経済新聞朝刊では、類似する上場株を参考にする現在のルールについては、廃止する方向であることも報じられています。つまり、新しいルール案が導入されれば、これまでとは評価の基礎となる考え方そのものが変わることになります。

そのため、同じ医療法人であっても、現在の方法による評価額と新しい方法による評価額に差が生じる可能性があります。

評価額が高くなる医療法人、低くなる医療法人

では、新しい評価方法が導入された場合、出資持分の評価額はどのように変わるのでしょうか。
ここで注意したいのは、すべての法人の評価額が高くなるわけではないということです。

2026年8月20日付の日本経済新聞朝刊では、中堅税理士法人の協力を得て、新ルール案による評価額や相続税額の試算が紹介されています。その試算では、収益力が高く規模の大きい法人では評価額が上昇する一方、規模の小さい法人では評価額がおおむね低下する結果となっています。

もう一つ注目したいのが、資産の含み益・含み損の影響です。
現在の純資産価額方式では、法人が所有する資産を相続税評価額に置き換えて評価します。これに対して、新しいルール案では簿価純資産が評価の基礎となります。

そのため、他の条件が同じであれば、例えば不動産などに大きな含み益がある法人では、新しい方法による評価額が現在より低くなる方向に働く可能性があります。反対に、資産に含み損がある法人では、新しい方法による評価額が現在より高くなる方向に働く可能性があります。

さらに、新しい評価方法では収益力も重視されます。そのため、利益が多く出ている法人では評価額が高くなり、利益があまり出ていない法人では低くなる傾向が考えられます。

ただし、実際の評価額は一つの要素だけで決まるものではありません。
日本経済新聞の試算でも、平均で赤字となっている法人であっても、簿価純資産が大きいため、現在0円だった評価額が新ルール案では4,000万円となった事例が紹介されています。

したがって、「利益が出ているから上がる」「含み益があるから下がる」と単純に判断するのではなく、法人の資産と収益の両面から考える必要があります。

まずは自分の医療法人への影響を知る

今回の新しい評価ルール案は、まだ検討段階です。

2026年8月21日付の日本経済新聞朝刊によると、国税庁は今後、有識者会議での議論を経て、2027年度の税制改正大綱に反映し、2028年1月以降の相続からの適用を目指しています。

そのため、現時点で新しい評価方法を前提として、急いで相続対策や事業承継対策を変更する必要はないでしょう。

一方で、持分あり医療法人の先生にとっては、今のうちに確認しておけることがあります。
それは、現在の方法で出資持分がどの程度の評価額になっているのか、そして新しい評価方法が導入された場合に、その評価額が高くなる方向なのか、低くなる方向なのかを把握しておくことです。

法人が所有する資産に含み益があるのか、含み損があるのか。また、現在どの程度の利益を上げているのか。こうした法人の状況を整理することで、新しい評価方法が導入された場合に、ご自身の医療法人の出資持分の評価がどのような影響を受ける可能性があるのかも見えてきます。

制度が正式に決まってから慌てて対応するのではなく、まずは現在の状況を知っておくことが、今後の相続や事業承継を考える第一歩になります。

まとめ ― まずは出資持分の現状を確認する

今回の評価方法の見直しは、「出資持分の評価額が高くなる改正」と単純に捉えるものではありません。
法人の資産や利益の状況によって、現在より評価額が高くなる場合もあれば、低くなる場合も考えられます。

だからこそ、制度が正式に決まる前の段階で慌てて対策を始めるのではなく、まずは「自分の医療法人はどちらになりそうなのか」を知っておくことが大切です。

医療法人の相続・事業承継では、出資持分の評価額によって、後継者への承継方法や相続対策の選択肢が変わることがあります。

まずは現在の出資持分の評価額や法人の資産・収益の状況を把握し、今後の制度改正によってどのような影響を受ける可能性があるのかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

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