開業医の相続・事業承継において、親が子供たちに財産を平等に分けたいと考えることは自然な発想です。しかし、医療法人の出資持分を分散することが、本当に理想的な方法なのでしょうか?一見すると公平な選択肢に思えますが、実際には医療法人の経営に大きな影響を及ぼすリスクがあります。
本記事では、出資持分を分散することで生じるリスクと、その回避策について解説します。円滑な事業承継を実現するためのポイントを、実例を交えながらお伝えしますので、ぜひご一読ください。
社団医療法人とは?

医療法人には「社団医療法人」と「財団医療法人」がありますが、一般的に設立されるのは「社団医療法人」です。社団医療法人には、持分あり社団医療法人と持分なし社団医療法人があり、今回は「持分あり社団医療法人」について解説します。
平成19年4月1日に施行された第5次医療法改正前までは、多くの「持分あり医療法人」が設立されました。その背景には、昭和60年12月の医療法改正(昭和61年10月施行)が影響しています。この改正により、それまで医師・歯科医師3名以上が設立要件だった医療法人が、「1人医師医療法人」として設立可能になりました。つまり、医師または歯科医師1名で医療法人を設立できるようになったのです。
この規制緩和により、医療法人の設立件数が増加し、現在、その多くが事業承継のタイミングを迎えています。私が関与した案件でも、このような背景を持つ医療法人がありました。当時の状況とその後の経緯を踏まえ、出資持分の分散がどのような影響を及ぼすのか詳しく見ていきましょう。
平成19年4月1日に施行された第5次医療法改正前までは、多くの「持分あり医療法人」が設立されました。その背景には、昭和60年12月の医療法改正(昭和61年10月施行)が影響しています。この改正により、それまで医師・歯科医師3名以上が設立要件だった医療法人が、「1人医師医療法人」として設立可能になりました。つまり、医師または歯科医師1名で医療法人を設立できるようになったのです。
この規制緩和により、医療法人の設立件数が増加し、現在、その多くが事業承継のタイミングを迎えています。私が関与した案件でも、このような背景を持つ医療法人がありました。当時の状況とその後の経緯を踏まえ、出資持分の分散がどのような影響を及ぼすのか詳しく見ていきましょう。
医療法人の出資持分とは?

「出資持分」とは、医療法人における出資者の財産的な権利を指します。株式会社における株式と似た概念ですが、大きく異なる点がいくつかあります。
①持分あり法人と持分なし法人の違い
医療法人には「持分あり」と「持分なし」の二つの形態があります。持分あり医療法人では、出資者が法人に対して財産権を持ち、持分を相続・贈与・譲渡することが可能です。一方、持分なし医療法人は、出資者が財産的な権利を有さず、法人の資産は法人そのもののものであり、相続や譲渡の対象にはなりません。
平成19年4月1日以降、新たに設立される医療法人は「持分なし」のみとなっていますが、それ以前に設立された「持分あり法人」は今も多く存在しており、承継時には特に注意が必要です。
②出資持分の持つ財産権
出資持分には、社員退社時の「出資持分払戻請求権」と、解散時の「残余財産分配請求権」という二つの財産権があります。
社員が退社する際、出資持分に相当する金額を医療法人に請求できる権利がありますが、これにより医療法人の資金繰りが悪化する可能性があります。ただし、出資持分払戻請求の権利行使は任意であり、必ずしも発生するわけではありません。しかし、退社時にトラブルが生じた場合などは、請求権が行使されるリスクが高まります。
また、医療法人が解散した場合には、法人に残った財産のうち、出資持分に相当する割合を請求することが可能です。ただし、医療法人は非営利法人であるため、原則として剰余金の配当は禁止されています。そのため、社員の身分を維持したまま払戻しを請求することはできず、医療法人の解散前に持分を換金することも認められていません。この点には十分注意が必要です。
③議決権についての注意点
出資持分を取得し、社員総会の承認を受けて医療法人の「社員」として入社した場合、社員総会での議決権が付与されます。出資持分を取得しただけでは議決権を持つわけではない点に注意が必要です。
(※社員総会=医療法人の最高意思決定機関)
また、医療法人では株式会社とは異なり、議決権は「1人1票」と定められています。そのため、持分の保有割合に関係なく、社員総会で社員として承認された者は平等に1票の議決権を持ちます。
①持分あり法人と持分なし法人の違い
医療法人には「持分あり」と「持分なし」の二つの形態があります。持分あり医療法人では、出資者が法人に対して財産権を持ち、持分を相続・贈与・譲渡することが可能です。一方、持分なし医療法人は、出資者が財産的な権利を有さず、法人の資産は法人そのもののものであり、相続や譲渡の対象にはなりません。
平成19年4月1日以降、新たに設立される医療法人は「持分なし」のみとなっていますが、それ以前に設立された「持分あり法人」は今も多く存在しており、承継時には特に注意が必要です。
②出資持分の持つ財産権
出資持分には、社員退社時の「出資持分払戻請求権」と、解散時の「残余財産分配請求権」という二つの財産権があります。
社員が退社する際、出資持分に相当する金額を医療法人に請求できる権利がありますが、これにより医療法人の資金繰りが悪化する可能性があります。ただし、出資持分払戻請求の権利行使は任意であり、必ずしも発生するわけではありません。しかし、退社時にトラブルが生じた場合などは、請求権が行使されるリスクが高まります。
また、医療法人が解散した場合には、法人に残った財産のうち、出資持分に相当する割合を請求することが可能です。ただし、医療法人は非営利法人であるため、原則として剰余金の配当は禁止されています。そのため、社員の身分を維持したまま払戻しを請求することはできず、医療法人の解散前に持分を換金することも認められていません。この点には十分注意が必要です。
③議決権についての注意点
出資持分を取得し、社員総会の承認を受けて医療法人の「社員」として入社した場合、社員総会での議決権が付与されます。出資持分を取得しただけでは議決権を持つわけではない点に注意が必要です。
(※社員総会=医療法人の最高意思決定機関)
また、医療法人では株式会社とは異なり、議決権は「1人1票」と定められています。そのため、持分の保有割合に関係なく、社員総会で社員として承認された者は平等に1票の議決権を持ちます。
医療法人の実例から見たリスクと対策

私が関与する前に、相続税対策として医療法人理事長の父が3人の子供に対し、出資持分を平等に贈与していたケースがありました。兄弟3人とも社員総会の承認を経て社員として医療法人に入社していましたが、長男は医師でクリニックの後継者だったものの、次男と三男は医療とは無関係の仕事に就いていました。確かに、出資持分を贈与することで相続税の負担は軽減されるかもしれません。 しかし、その一方で、医療法人の経営に大きなリスクをもたらす可能性があるのです。
このケースでは、経営権の分散による意思決定の停滞や、持分の分散によるさらなるリスクが問題となりました。医療法人の経営には迅速な意思決定が求められる場面が多くありますが、社員としての議決権を持つ兄弟が増えると意思決定が滞る可能性が高まります。例えば、新しい診療機器の導入や設備投資の判断を行う際に、医療とは関係のない兄弟が反対すれば、スムーズな意思決定ができなくなることもありいます。
また、出資持分を持つ兄弟のうち1人が亡くなると、その持分は配偶者や子供へ相続されることになります。さらに、相続人を安易に社員として入社させると、医療法人の経営に大きな影響を及ぼすリスクが懸念されます。
加えて、社員が退社(死亡による退社を含む)する場合、持分の払い戻し請求が発生する事態も考えられます。その金額は、出資持分の額面ではなく時価相当額となるため、経営が順調な医療法人ほど高額な払戻しに対応せざるを得ず、財務状態の悪化につながる恐れがあります。
私は、後継者である長男が経営の主導権を握れるよう、次男と三男の持分を買い取る方法を提案しました。適切なタイミングを見計らい、後継者が持分を取得し、兄弟2人が退社する計画です。一度分散した出資持分を集約するには時間と費用がかかるため、決して容易に解決できる問題ではありません。
このケースでは、経営権の分散による意思決定の停滞や、持分の分散によるさらなるリスクが問題となりました。医療法人の経営には迅速な意思決定が求められる場面が多くありますが、社員としての議決権を持つ兄弟が増えると意思決定が滞る可能性が高まります。例えば、新しい診療機器の導入や設備投資の判断を行う際に、医療とは関係のない兄弟が反対すれば、スムーズな意思決定ができなくなることもありいます。
また、出資持分を持つ兄弟のうち1人が亡くなると、その持分は配偶者や子供へ相続されることになります。さらに、相続人を安易に社員として入社させると、医療法人の経営に大きな影響を及ぼすリスクが懸念されます。
加えて、社員が退社(死亡による退社を含む)する場合、持分の払い戻し請求が発生する事態も考えられます。その金額は、出資持分の額面ではなく時価相当額となるため、経営が順調な医療法人ほど高額な払戻しに対応せざるを得ず、財務状態の悪化につながる恐れがあります。
私は、後継者である長男が経営の主導権を握れるよう、次男と三男の持分を買い取る方法を提案しました。適切なタイミングを見計らい、後継者が持分を取得し、兄弟2人が退社する計画です。一度分散した出資持分を集約するには時間と費用がかかるため、決して容易に解決できる問題ではありません。
出資持分の分散は避けるべき!
最適な医療法人の事業承継を検討しよう

医療法人の出資持分を分散すると、経営の混乱や財務状態の悪化、さらなる持分の分散リスクが発生しやすくなります。後継者がスムーズに医療法人を承継できるよう、持分は後継者1人に集中させ、他の兄弟には換金性の高い資産を贈与するなどして分配するのが最善の方法です。つまり、医療法人の事業承継対策では、家族間での事前の話し合いが欠かせないのです。
医療法人の事業承継では、将来的なトラブルを防ぐために、早い段階で専門家と相談し、適切な対策を講じることが求められます。当社では、円滑な事業承継をサポートするため、「事業承継ミーティング」や「家族会議支援®」をご提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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