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相続直前の不動産評価に見直しの議論 ─ 今後の方向性を考える

相続直前の不動産評価に見直しの議論 ─ 今後の方向性を考える

2025年11月27日付の日本経済新聞・朝刊で、投資用不動産の相続に関する評価方法の見直しが取り上げられました。政府・与党は、他人への賃貸を目的とした不動産のうち、相続の直前に取得された物件の評価額について、従来の路線価ではなく、購入時の価格を基礎とする方向で議論を進めています。 特に「購入から5年以内の相続」を念頭に置いた調整が進められており、評価額が大きく変わる可能性が示されています。

今回の議論は、不動産を相続対策として活用する際に「実行の時期」と「評価の妥当性」がこれまで以上に重要になることを示唆しています。本記事では、この見直しの方向性と背景、そして今後の相続対策への影響について整理します。

相続直前の不動産は「購入価格」が基準に

政府・与党が示した改正案では、相続の直前に取得した投資用不動産について、路線価ではなく購入価格を基礎に評価するという新たなルールが検討されています。報道によれば、対象は「購入から5年以内の相続」を軸に調整される見通しで、2026年度税制改正大綱に盛り込まれる可能性があります。

これまで不動産の相続税評価額は、国税庁が毎年公表する路線価などを用いて計算するのが通例でした。しかし、相続直前に購入した物件については、実勢価格と評価額の乖離が大きくなる場合があるため、その取り扱いが課題とされてきました。特に都心部の賃貸マンションやオフィスビルのように、収益性が高く市場価格が安定している物件では、路線価との乖離が大きくなるケースが目立ちます。

新しい方式では、被相続人の購入時の価格に地価の変動を反映させ、そこからおおむね2割程度を差し引いた金額を評価額とする案が示されています。路線価を用いた評価よりも高い額が算定されることになるため、相続税の負担が増加する可能性が高まります。

不動産小口化商品は「取引事例を基に評価」へ

今回の見直しは、不動産小口化商品にも及びます。これらの商品は、マンションやビルを複数人で共同購入する形式をとり、賃料収入を按分して受け取る仕組みです。小口で取得でき、管理の手間が少ないことから、富裕層を中心に利用が広がっています。

しかし、現行の相続税評価では、商品自体の市場価格や取得価格よりも低い評価となる場合があり、結果として評価額が大きく圧縮されるケースが指摘されてきました。報道では、3,000万円で購入した商品が480万円と評価され、贈与税が大幅に軽くなった具体例も紹介されています。

政府・与党はこうした状況を踏まえ、商品ごとの取引事例などを基礎として相続税評価額を算定する方式へ移行する方向で調整を進めています。市場実態を適切に反映し、資産規模に応じた公平な負担を確保する狙いがあると考えられます。

評価方法見直しの背景 ─ 「実情とかけ離れた評価」を避ける流れ

今回の検討は、2024年に見直されたタワーマンションの評価方法の延長線上にあります。タワーマンションの一部では、相続税評価額が実勢価格と大きく乖離することが問題となり、評価方式が見直されました。

政府の税制調査会でも、国税庁が事例を紹介しています。たとえば、東京都千代田区の賃貸マンション1棟が、2019年に21億円で購入されたにもかかわらず、2022年の相続時には4.2億円と評価されていたという例が示されました。このような大きな乖離は、評価方法の妥当性そのものに疑問を生むことになります。

こうした経緯から、市場価格との整合性を保つために評価方法を見直す必要性が認識されるようになりました。今回の報道は、その流れが賃貸マンション・オフィスビル・小口化商品など、不動産全般へ広がってきたことを意味します。

相続対策の「タイミング」がこれまで以上に重要に

今回の見直しが示している最も大きなポイントは、「相続直前に不動産を取得して評価額を下げるような方法は、今後は通用しなくなる可能性が高い」という点です。

評価方法が見直される方向性にある以上、相続に備えた財産の整理や不動産の検討は、早期に着手することが欠かせません。短期間で不動産の購入や組み替えを行っても、評価方法の見直しによって期待した効果が得られないだけでなく、資産全体のバランスを損なう可能性もあります。

相続対策は、家族構成・財産の種類・不動産の特性・法人の有無など多くの要素が複雑に絡み合います。時間をかけて整理することでこそ、選択肢の幅が広がり、将来を見据えた判断が可能になります。

まとめ ─ 評価の見直しが進む今こそ、早めの備えが大切

政府・与党が議論を進めている不動産評価の見直しは、市場実態との乖離を最小限に抑え、公平性を確保するという時代の流れを象徴しています。相続の直前に不動産を取得して評価額を抑えるような手法は、今後は期待しにくくなり、むしろ慎重な対応が求められます。

不動産を中心とした相続対策は、単に税負担の軽減を目的とするものではなく、ご家族が安心して財産を承継できるよう、長期的な視点で整えていくことが何より重要です。今回の報道を機に、早めの段階から財産全体を見直し、将来の備えを着実に進めるきっかけとしていただければ幸いです。

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