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クリニックを守るために今できること 開業医が考える相続と事業承継の最初の一歩とは?

クリニックを守るために今できること 開業医が考える相続と事業承継の最初の一歩とは?

開業医の先生が直面する「クリニックの未来をどう守るか」という課題。相続や事業承継の対策を後回しにしていませんか?クリニックを守り、家族や地域医療を安心につなげるためには、今からできる「最初の一歩」があります。本記事では、親族内承継を成功させるポイントや実際の成功事例を通じて、その重要性と具体的な進め方をわかりやすく解説します。

開業医の事業承継 親族内承継がクリニックの未来を守るカギ

「このクリニックをどうするべきか…」
60代半ばを迎えた多くの開業医の先生が、一度はこのように考えたことがあるのではないでしょうか?

開業医の相続と事業承継を成功させるためには、まず後継者を決めることが最優先事項となります。そして、その後継者が家族であること、つまり「親族内承継」を実現することが、クリニックを守る最善策だと私は考えています。

なぜなら、家族が引き継ぐことで、診療方針やクリニックの理念がそのまま受け継がれます。患者さんにとっても、「いつものクリニック」が変わらない安心感は非常に大きな意味を持ちます。また、スタッフにとっても、経営が親族内で引き継がれることで雇用の安定が保証され、引き継ぎの過程がスムーズになります。

さらに、親族内承継が実現することで、地域医療が守られ、ひいては地域住民が安心して暮らせる医療環境が維持されます。一つのクリニックが地域に果たしている役割は想像以上に大きく、その存在が地域全体の健康を支えていることを忘れてはなりません。

では、なぜ事業承継の方針を相続対策よりも先に考える必要があるのでしょうか。
その理由を次でお話しします。

なぜ後継者を決めることが最優先なのか?

そもそも後継者が決まらないと、相続対策も事業承継も適切な計画を立てることができません。
クリニックの土地や建物、医療法人の出資持分などの財産をどう引き継ぐかは、後継者が誰になるかで全く違った方向に進みます。まず始めに後継者を決めることが、相続対策をスタートするうえでの最重要事項になるのです。

たとえば、後継者が家族内の医師であれば、その方を中心に事業用財産を引き継ぐ計画が進みます。後継者以外のご兄弟に持分あり医療法人の出資持分を贈与することは避けるべきです。一方で、後継者がいない場合や親族内承継が難しい場合は、第三者への譲渡やクリニックの廃業を検討せざるを得ない場合もあります。

また、後継者が決まらないままでは、クリニック運営に関する将来の方針も曖昧になりがちです。患者さんへの周知が遅れ、信頼関係に影響が出ることも考えられます。後継者の決定は、クリニックの運営方針を明確にし、スタッフや患者に安心感を与えるための重要なステップです。

事業承継の方針が定まることで、相続対策のスタート地点が明確になります。後継者が決まると、後継者自身が必要なスキルを身につけたり、経営を引き継ぐ準備を整えたりすることができ、次のステップへスムーズに移行できます。

では、実際にどのような成功例があるのか、また親族内承継が難しい場合にどのような対応が考えられるのか、具体的な事例をご紹介します。

実際の成功例から見る、親族内承継の力

成功例:親族内承継で地域医療を守ったケース

医療法人を経営する70代前半の医師が、元気なうちに息子さんと後継者としての話し合いを始めました。他にも医師のご兄弟がいましたが、家族会議を経て、お父様が当初から予定していた息子さんを後継者に指名しました。この話し合いでは、家族全員の合意を得ることが非常に重要なポイントでした。医療法人を継ぐ意思を固めた息子さんのおかげで、クリニックや地域医療への影響を抑えることができたのです。

息子さんクリニックとは若干異なる診療科の医師でしたが、承継が決まった後はお父様が診療に必要なスキルを指導し、私はクリニック経営に必要な基本的な知識を身につけられるよう支援しました。

また、顧問税理士と協力し、持分あり医療法人の出資持分を父から後継者へ生前贈与する計画を立てました。出資持分の評価額が低いタイミングを見逃さなかったことで、贈与税を負担することなくすべての出資持分をご子息に移転することができました。

出資持分の贈与が完了した後に、クリニックの建物の建て替えを行いました。土地は前理事長の所有のまま、建物は既存の状態で医療法人に譲渡。建物を医療法人の所有にしてから、クリニックの建物を建て替える形をとりました。建物の取得は出資持分の評価に影響を与えるため、先行して出資持分を贈与しています。

こうした取り組みを経て、家族全員が納得する形でクリニックを引き継ぎ、地域の患者さんが引き続き安心して医療を受けられる環境を守り続けることができました。ここまでたどり着くには、数年の時間を要しました。

代替案:後継者がいない場合

もちろん、身内に医師がいないケースや、お子さんがクリニックを継ぐ意思がないケースもあります。そういった場合、第三者である医師への譲渡、つまりM&Aを検討することが有効です。

私が支援したあるケースでは、医療法人の出資持分とクリニックの土地建物を第三者である医師に譲渡する運びとなりました。親族内の後継者が不在だったことから、売り手側の先生は医療法人を第三者に譲渡する方針を早い段階で決めていて、それに基づいた計画が進められました。

売り手側の手取額を可能な限り最大化するために、顧問税理士と協力して事前に綿密な試算を行っています。また、理事長だけでなく、理事のご家族にも役員退職金を支給することで、ご家族全員がM&Aによる経済的利益を享受できる仕組みを整えました。その結果、売り手と買い手の双方が納得のいく形で出資持分譲渡が無事に成立し、患者さんやスタッフへの影響を最小限に抑えつつ、地域医療の継続を可能にしています。

後継者を決めることが、クリニックと地域を守る第一歩

結論として、クリニックの相続と事業承継を成功させるためには、まず後継者を決めることが必要不可欠です。親族内承継が実現すれば、家族や患者、スタッフだけでなく、地域医療や国民全体の医療環境を守ることにもつながります。

私はこれまで、士業などの専門家と協力して開業医の先生の相続と事業承継をサポートしてきました。その経験を活かし、先生方の状況に合わせた最適な方法を一緒に見つけていければと思います。少しでもお悩みやご不安があるようなら、ぜひお気軽にご相談ください。

セミナー情報もお知らせします!
開業医の先生向けに「わかりやすくてためになる 開業医のための相続セミナー」を開催します。このセミナーでは、相続対策の進め方や家族会議など、具体的なテーマについて解説します。クリニックとご家族を守るためにできることを、実例を交えながらお話しします。別の記事にも掲載しておりますので、ぜひご参加をご検討ください!

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